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CRMとは何か(第3弾)

これまでに私はそもそもCRMとは何か?(及び続編:CRMとは何か(続き))についてご説明して参りました。

今回は、これまでの説明の補足、およびCRMの難しさについてお話したいと思います。(実現の難しさについては、こちらも参考になると思います。)

これまでにもお話しました通り、CRMというのはビジネス戦略です。戦略ですから、各社各様のものであり、必ずこうでなければならないというものではありません。これを職務あるいはソリューションと捉えてしまいますと、例えば、経理システムや人事システム、製造業ですと生産管理システム、のようにどの会社にも必ず同じものが必要というわけではありません。ですので、各社各様のCRMが存在していることの方がむしろ自然と言えます。まして、各社各様のCRMが各社のビジネスに沿った形になっているのであれば、それが各社にとっての正しいCRMということになるはずです。

では、どのような場合に各社各様のCRMが弊害をもたらすか?について考えてみたいと思います。

まず、一つの会社の中であっても、部門により顧客に対する考え方が異なることが多いということが言えます。なので、社内のさまざまな顧客に対して一貫した戦略や考え方が必要となる場合に、部門間での意識合わせの際に出てくる用語としてCRMが登場します。立場の異なる人どうしでの共通用語として機能させる必要がありますので、できるだけ普遍的、客観的なアプローチが必要ということになります。

さらに、グループ会社を含め社外の関係者とコミュニケーションを図る際にも、社内固有の考え方や用語よりも、より広く受け入れられているものの方が好まれるようになるということにもなっていくかと思います。

そして、CRMをサポートするソリューションが必要となった場合、これは今や社内で独自開発を行うというよりも、SaaS型を含めたパッケージ製品が成熟しており、こちらを採用することの方が合理的になってきており、適切なソリューションを選定する際に問題が起きかねないということです。パッケージ製品はどの業界、どの企業規模、どの地域でも利用できるように設計されていますので、そこで採用されている言葉遣いであったり、プロセス、プラクティス(業務のやり方)や機能をできるだけそのまま活用した方が、長期的にみて有益だということです。

とは言え、適切なCRMソリューションを選定する際に、ある程度のパターンと言いますか、決まった方向性もございます。典型的には次のようなものでしょうか?

  • 製造業におけるSFAとも呼ばれることの多い営業支援ソリューションがそのままCRMシステムとなる。
  • 金融機関など、大規模なコールセンターを保有している企業における顧客サービス担当部門の業務支援がそのままCRMシステムとなる。
  • 通信販売やメンバーシップ・プログラムなど、インターネットを介したビジネスの場合、ネット上での取引(すなわちEコマースシステム)や解約阻止のためのダイレクト・マーケティング業務がCRMシステムとなる。

などです。

最初に申し上げました通り、CRMというのは各社各様のものであって構わないのですが、このようなCRMソリューションを採用することで業務改善が図れる、仕事が楽になる、コスト削減といった成果が期待される訳ですが、ここで止まってしまい、さらなる発展的な活用に目を向けない企業が非常に多いような気がしてなりません。

本来的なビジネス戦略としてのCRMというのは、激しさを増す市場競争に勝つため、そのためにお客さんから自社を選んでもらうような取り組みを目指しているはずです。短期的に業務が改善したとしても、そこで満足するのではなく競合他社の成長や新規参入といった状況の変化も考慮する必要がある訳です。したがいまして、営業支援やコールセンター、Eコマースなどの業務改善に留まるのではなく、本来的なCRM の実現を絶えず目指していくというのが本来のCRMではないでしょうか?

私が考える本来的なCRMとはおおよそ次のようなものです。

  • 単発ではなく、長期的に顧客との関係を改善し続ける、そのために顧客生涯価値(LTV)の向上を目指すこと。
  • 顧客接点を業務的な括り(つまり企業目線)ではなく、顧客視点で一元的に整備し、あらゆる顧客接点におけるカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)の向上を図ること。
  • 顧客に生ずる変化や競合や市場動向をいち早く取り入れ、他社に先駆けた対応が図れること。

このような方向性でCRMを実践していくには、言うまでもなく昨今のテクノロジーを活用することになるはずです。典型的にはあらゆるコンタクト・チャネルから顧客情報を収集・蓄積する顧客データ・プラットフォーム(CDP)、顕在的なものだけでなく、潜在的な顧客の考えや気持ちを把握するための顧客の声ソリューション(VoC)、デジタル・チャネルを中心とした効果的なエクスペリエンスを提供するデジタル・エクスペリエンス・プラットフォーム(DXP)などが挙げられます。もちろんこれらテクノロジーの内部には予測、自動化、代行といったあらゆる人工知能が組み込まれており、日々進歩を遂げているというのが昨今の状況です。ですので、テクノロジーの目覚ましい進展に目を奪われがちになる訳ですが、本来の皆様のビジネスにおけるCRMは何を目指しているのか、この視点を常に念頭に置きつつ、進化を続けるテクノロジー動向にも目を向けておくべきであると私は考えます。

本日はCRMの補足説明をさせていただきましたが、このことと、このブログで提起する3つのナゾは大きく関係し合っていると私は考えています。引き続き関連トピックを提供して参りますので、ご感想やご質問などお寄せいただければ幸いです。

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