20世紀終わり頃に登場したCRM(顧客関係管理)とは何か?についても整理しておきたいと思います。というのもCRMは人により立場により、考え方や定義が異なることが非常に多いからです。どれが正しいとか誤りとかいった議論にあまり大きな意味はないと思いますが、ある特定の課題に取り組む上では、CRMの定義や前提、背景などを考慮せずに議論すると良い結論を得ることはかなり難しいと思います。
話し出すとかなり長くなりますので、CRMについてあまり詳しくない方、あるいは一旦頭を整理したいとお考えの方向けに、要点をまとめますと、
・CRMとは本来ビジネス戦略であり、組織/職能やITソリューションではない、つまりそれらだけでは充足できない。しかもITを活用したCRMソリューションが登場してからは、そのようなソフトウェア製品そのものを指すことが多くなってきた。しかし、それだけでは不十分であるだけでなく、余計な混乱を生む傾向にある。
・本来的なビジネス戦略であるCRMとは、(企業中心ではなく)顧客を中心に据え、顧客満足の向上に重点を置くことでそれを提供する企業の発展(収益性向上)に寄与する考え方であり、それに基づく実践(プラクティス)までを包含するものである。なお、ここで言う「顧客」とは最終消費者だけでなく、直接の取引相手となる法人顧客を指すことがむしろ多い。
・ところが、CRM戦略を適切に策定・実践し、ビジネス成長を実現できている企業は未だに少ない。逆にCRMソリューションに多大な投資をして、投資回収に苦労する企業が非常に多い(ので、問題視されることになる)。
ということになるかと思います。
では、何故CRMが注目されるようになってきたのかということですが、これはひとえに、従来のビジネスのやり方では限界を迎え、顧客を中心にしてビジネスを考え直すことで競争力を得る必要性が出てきたからです。従いまして、(現在だけでなく将来にわたって)従来のビジネスのやり方で全く問題なく競争力が確保でき、かつ業績も好調という企業におかれましては、CRMは全く不要ということになります。しかし、インターネットが普及しデジタル・テクノロジーが日を追うごとに発展している現代においては、新たな形で競争が激化し、提供する商材もソリューション型に変容するようになり(「モノからコトへ」と表現されることも多いかと思います)、おそらくCRMと無関係なビジネスはかなり少なくなってきているのではないでしょうか?
本当に長くなりますので、本稿ではここまでにしておきます。いずれ続編を投稿致しますので、ご関心具合をお知らせください。またご意見やご要望等お持ちの方は、コメント欄またはお問い合わせ窓口までお願い致します。