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そもそも「日本型」ビジネスって何よ?

このブログおよびYouTubeチャネルでは、「日本型ビジネスのナゾを解き明かす」ことを目的としております。

今さらですが、私が考える「日本型ビジネス」がどういうものかを説明していないことに気がつきました。

そこで今回は、私が言うところの「日本型ビジネス」とは何かについてご説明いたします。

まず、資本主義に基づく現在のビジネスの形は日本固有のものではなく、明治以降に西洋から日本に持ち込まれたことは言うまでもありません。それまではそういった西洋的な要素のない、伝統的な日本のビジネス(”商い”というべきでしょうか)が行われていたわけですから、どこかのタイミングで突然あるいは徐々に西洋的なビジネスの仕方が入ってきたものと思われます。その過程の中で、1) 伝統的・日本的な流儀で問題のないものはそのまま存続した、2) 西洋型に変更せざるを得なかったものについてはやむなく転換していった、と思われます。あるいはその中間的な形として、3) 伝統的・日本的な流儀では問題があったため、何らか西洋型に転換したものの、完全に西洋型になっていないもの、もあると思います。

従いまして、私が言うところの”日本型”ビジネスは、上記の1)もしくは3)を指すことになります。少し例を挙げてみたいと思います。

1)に該当するもの — 当然ながら日本語による文書・契約書などはここに該当します。ただし、アルファベットによる併記、押印ではなくサインといった形式は3)に該当します。

2)に該当するもの — わかりやすい例としては、インターネット標準への依存、例えばwwwやTCP/IPなどでしょうか。

3)に該当するもの —  例えば日付を西暦とするか和暦とするか、などはわかりやすい例だと思います。

ただし、これらはいずれも表出化した、言い換えると「結果」です。むしろ、このような「結果」に至る前段階の考え方や背景(コンテクスト)に日本的な要素が依然として根強く存在するように思えます。もちろん、すべての”日本型”が問題であるという訳ではなく、「良き伝統」のすべてを否定するものではありません。しかし、ビジネス自体がグローバル化し国際競争に勝ち残る必要がある現代において、”日本型”であるが故に後塵を拝しているようなものであるとすればそれは大問題であり、その原因となっている「ナゾ」を究明したいということです。

日本というお国柄は、世界でも珍しい単一民族、単一言語、単一通貨で成り立っている国家です。また、日本以外に日本民族、日本語、日本円で国家や経済圏を形成している所はありません。なので、グローバル社会の中で孤立した「ガラパゴス」と揶揄されるような社会を形成しやすい環境にあると言えます。だからこそ、国内のみでビジネスを行っているという場合であっても、海外での出来事や状況にアンテナを張り、海外との比較に敏感になっておく必要があると私は思います。海外の状況を知らずして”日本型”で国内市場にのみ注力するという場合と、海外の状況を知り比較し熟慮した結果、”日本型”ビジネスを継続するという場合では、早晩大きな差が生まれてくるのではないでしょうか。

では、日本社会やビジネスを海外と比較した場合、どういった特徴があるのでしょうか?

日本は欧米社会と比較して「ハイ・コンテクスト」であると言われます。ハイ・コンテクストというのは、インターネットで調べてみると、「コミュニケーションにおいて、言葉そのものだけでなく、相手との関係性、状況、表情、声のトーン、文化的な背景、共有された前提知識などの『文脈(コンテクスト)』に重きを置く考え方です。多くの場合、言葉で説明されることは少なく、『暗黙の了解』や『阿吽の呼吸』、『以心伝心』が重視され、行間を読む力が求められるコミュニケーションスタイルです。」とあります。これに対して欧米社会は「ロー・コンテクスト」とされています。これは、「相手の知識や文化背景に依存せず、言葉を直接的かつ具体的に表現するコミュニケーションスタイルです。ローコンテクストでは全ての情報を言語で明確に伝えることが重視され、メッセージは額面通りに受け取られます。アメリカなどの欧米諸国で多く見られ、明確な指示や情報伝達が不可欠なビジネスシーンで活用されています。」となっています。ご興味のある方は、「異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養」をご覧ください。つまり、日本社会は単一言語・民族で個々人の価値観もさほど大きくずれないため、事細かな背景情報の説明が必要とされず、そのような情報はむしろ「みなまで言うな」といった形で敬遠される傾向がありますが、多言語・多民族の欧米では、背景情報まで事前に事細かに説明し、決定事項も明示することが求められるということです。

従いまして、私が問題視する”日本型”ビジネスというのは、「ハイ・コンテクストであるが故、明示されない決定事項やメッセージが外部に意図通りに伝わらないことで発生しうる、失敗する可能性の高いビジネス」ということになります。

私は四半世紀以上にわたって外資系企業で勤務して参りましたので、日本国内で行われているビジネスおよびその習慣がどのように海外(特に欧米)から見られているかを話し合う機会に多く恵まれました。逆に言いますと、国内の日本企業に勤務し国内の顧客や取引先としか交流のない場合には、何が”日本型”であるかを見極めにくいということも考えられます。そこで、私が経験してきた、”日本型”あるいは”日本的”なビジネス習慣を以下に列挙しておきます(ほとんど羅列のレベルで恐縮です)。

  • 挨拶の仕方(頭を下げるお辞儀など)、名刺の交換、印鑑押印など
  • 会議参加者が何も発言しない。自分の意見を言う人が少ない。そういった人が少なからず会議に参加している。
  • 始業・終業とも遅い(残業当たり前など)。
  • 角を立てず、“和”を重んじる雰囲気
  • 会議時間が長く、意思決定が遅い。決定事項が明確な理由がなくいつの間にか覆っている。
  • 年功序列、終身雇用が大前提
  • 感情的あるいは人間関係を重視した意思決定
  • 「全体最適」、「先手を打つ」、「リスクを軽減する」といった戦略的・論理的な考え方よりも、「完璧主義」志向が目立つ。
  • 仕事以外のことを理由(言い訳)にした行動。(ただし、「家族」を理由にした早退などは外資でもよくあるような気がします。)
  • 異文化と交わる時には何らかミスコミュニケーションが発生するものであるが、それに慣れていない場合が多い。

おそらく挙げ出すと他にも色々と出てくると思います。また、中には説明不足のものもあると思いますので、不足や訂正の必要があるとお感じの方がいらっしゃいましたらコメント欄へお願いしたいと思います。

一方で日本でビジネスを行っている外資系企業は、日本でのビジネスを通じて収益を創出しようとしている訳ですから、日本市場を理解し、日本のスタイルに極力合わせようとしている点も忘れてはならないと思います。また、外資系企業の取り組み姿勢として、各業務の成果がどのような形でビジネスに貢献しているか、言い換えますと自分の業務がどんなバリューを産み出しているかということにとても敏感だと感じます。対して、”日本型”はどんなバリューが創出されたかよりも、言われたことをコツコツとすべてこなすことを良しとする風潮が強いように思います。

ナゾラボジャパンの活動目的は、日本企業が発展し、そこで働く皆様がより幸せで豊かな生活を送っていただくことにあります。そのために、何が「日本型ビジネス」で何がそうでないのかを見極めた上で、私のブログおよびYouTubeをご覧いただければと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。

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