このカテゴリーでは、情報システム部門にまつわるナゾについて究明して参ります。
私は30年以上前に某国内系SI企業にてキャリアを開始し、企業向けアプリケーションの設計・開発のためにクライアント企業何社かの情報システム部門に常駐するというスタイルで業務に取り組んでおりました。その後外資系のコンサルティング・ファームに転職し、ここでもやはり情報システム部門の方々と接して参りました。その後事業会社に転職し、CRM(リテンション)の推進役として必要なソリューションを情報システム部門に依頼するという経験もしました。その後はIT系リサーチ・ファームに移り、そこではIT系ということもあり、クライアントの多くは情報システム部門に所属する方々でした。
このように四半世紀以上の長きにわたり企業の情報システム部門の方々と接してきて感じることは、さまざまな組織が存在する同じ会社でありながらも、情報システム部門という組織の特殊性が本質的に変わっていないという点です。例えば、時代の変遷やテクノロジの進化などによって業務内容に変化が生じれば、たいていは組織体制や位置付けはそれに応じて変化していくはずです。もちろん昨今の目覚ましいテクノロジの発展により、業務内容自体にかなりの変化が訪れている情報システム部門は多いと思います。しかしながら私の眼から見ると、そのスピードが変化に追いついているとは思えません。それは何故でしょうか?
もう一つの側面は情報システム部門の社内での相対的なプレゼンスの低さです。目立たなさ、あるいは影響力の弱さなどと表現しても良いかもしれません。ただし、これはいわゆるバックオフィス部門に共通する性質なのかもしれません。しかし、経理、人事、法務など他のバックオフィス部門と比較しても私には情シス部門は相対的に立場が低いように見えます。実際に以下のようなエピソードを耳にします。おそらく皆様も類似の話に聞き及んだことがあるのではないでしょうか?
・情報システム部門に異動となったが、数年後のローテーションの時に希望を出して元いた営業部門に戻った。その理由は、営業出身の役員がたくさんいるのに対し、情シス出身の役員が一人もいなかった。自身の将来・キャリアを考えると営業部門にいた方が有利と考えた。
・新入社員の時に情報システム部門に配属になったと聞いてショックを受けた。あるいは、情報子会社に出向となることでも類似の反応がある。
・実際新入社員配属の一般的な傾向として、有能と判断されると営業や企画部門が優先され、情報システムを含むバックオフィスには残った人材を配置することになる。特に情報システム部門が大規模な場合、自ずと多くの人が配属されることになる。
・いわゆる「デジタル・トランスフォーメーション」を推進するために、(実際に必要とされる経験・スキル・知識等は情報システムそのもの、あるいは関係が深いにも関わらず)従来の情報システム部門とは別にデジタル統括部門が設立された。
また、「デジタル・トランスフォーメーション」に象徴されるように、現在ではデジタルやデータ、あるいはAIがビジネスを左右する時代になっています。にもかかわらず、デジタル・トランスフォーメーションに成功した、成果を出した、ビジネス・パフォーマンスの向上に寄与したと自信を持って言える企業が未だ少ないのも事実です。この現象も、情報システム部門にまつわるナゾと無関係ではないような気がしています。
これらの疑問に対して「その答えは簡単だよ」と明確に回答をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それならばなぜ適切な変化が訪れないのでしょうか?変化しなくてもビジネスに影響がないとお考えなのでしょうか?
このカテゴリーでは、以上のような情報システム部門についての様々なナゾを究明していきたいと思います。皆様の中には我が社の場合はこうなっているが問題ないのか?もしもこういった組織形態を取るとどうなるのか?そういった疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合には、コメント欄あるいはお問い合わせフォームからご質問や感想をお寄せいただければと思います。